君は私の唯一の光
【said 乃々花】

目を覚ますと、見慣れた天井。両手を握られてる感覚がして、目を向けると、右には洸夜くん、左にはお母さんがいた。お母さんの側には、お兄ちゃんとお父さんも。みんな、寝ちゃってる。




久しぶりに見たお父さんとお母さん。




お父さんは、特に変わりはなさそうだけど、お母さんは、やっぱり、苦しそうな顔をしていた。




お母さんの遺伝子によって、私のファブリー病は発症した。でも、お母さんは発症しておらず、すごい罪悪感を持っている。お母さんが悪いなんて誰も思ってないから、そんな風に苦しまないで欲しいんだけどね。




「乃々?」




私が起きた時に動いたからか、お母さんが目を覚ました。




「おはよう、お母さん。久しぶり。」




「乃々、体は大丈夫?」




まだ不安そうな顔をしたお母さんに、微笑む。




「大丈夫。もう、お腹痛くないよ。」




「よかった………。」





心底安堵した様子で、言うお母さん。罪悪感なんて、抱く必要ないのに、ずっと持ち続けている。もう、この病気の事で周りに迷惑をかけたくないのに、家族はそういうわけにいかない。





「お母さん、あんまり自分を責めないでね。私は、大丈夫だから。」




「乃々……。」



「私、お母さんの事、大好きなの。笑顔が特に。だから、笑ってて。お父さんもお兄ちゃんも、誰もお母さんの事、嫌いになんてなれないんだもん。」





お母さんが私の親で良かったって、心から思ってる。病気は仕方がない。それ以上のものを与えてくれるお母さんは、やっぱり世界で1人だけだから。





「お母さんも、自分を好きでいて。私の病気は、運が悪かっただけ。お母さんのせいじゃないよ。」





お母さんの大きな(あお)い瞳から、大粒の涙がこぼれた。そのまま、ゆっくり口角を上げて、「ありがとう、乃々。」と言った。私が、ずっと昔に見た、大好きなお母さんの笑顔だった。





「私、この病気が治ったら、お母さんとやりたい事、沢山あるんだ。だから、覚悟しててね!」





「うん、乃々がしたい事、一緒にしよう!」





お母さん、私はお母さんの子どもで、幸せだよ。病気の事で、嫌な事も沢山あったけど、今、洸夜くんと出会えてるのは、この病気のおかげ。




この気持ちは誰にも言えないけど、でも、この気持ちが自分に芽生えて良かったって、心から思える。たとえ、このまま死んでしまっても、後悔はない。伝えない方がいい事も、世の中にはいっぱいあるんだから。





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