君は私の唯一の光
花火大会から数日後。



松原さんが、私たちの病室を訪れていた。


制服を着ているので、多分学校帰り。



「洸夜、だいぶ足楽そうだね。」


「うん、めっちゃ動けるようになった。」



カーテンを閉めているので、表情は見えないが、2人の声はとても弾んでいた。




「今日は、職員会議で、いつもより早く下校だったから、来たんだよね。」



「わざわざ、ありがとな。」




2人が仲良しなのは、嫌でもわかった。カーテンが、私と洸夜くんの“しきり”に思えた。




「そういえば、今日教室で加藤(かとう)が、めっちゃバカな事してて、先生に怒られてた。」



「あいつ、いっつも何かしらやるよな。」





知らない世界の話。いつも洸夜くんに聞く時は嬉しいのに、今は言い表せない苦い感情が胸を支配していた。





松原さんが帰ってからも、苦い感情は消えず、洸夜くんと話がまともに出来ないと思った私は、寝たフリをした。


洸夜くんは、話しかけても返事がない私を心配して見にきてくれたが、呼吸が安定しているのを確認すると、安堵した様子だった。




「はぁ。びびった。乃々花、先に寝るなよ。つまんねーだろ。何より、心配するじゃん。」




そう言った洸夜くんは、私の頭を撫でた。ずっと撫でていてくれるその手が心地良くて、この時が、永遠に続いてほしいと思った。




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