君は私の唯一の光
中学に入学して、1か月。



みんなが仲良しグループを作っていく中、私だけは、いわゆる“ぼっち”だった。理由は単純。私の目だ。


切れ長のつり目。これに大半の人は、第一印象に“怖い”と思う。だから、声をかけられない。元々、自分から何かに入っていくのが得意ではなかったから、瞬く間に1人になった。


小学校の卒業と同時に引っ越したおかげで、友達……の前に、知り合いも“0”だった。理由は、お父さんの転勤。まあ、仕方がないけど。


部活も………とりあえず、体育は得意だったから、陸上部に入った。ここでも、1人。先輩方にも、特に何かを教わる事なく、部活の時間が過ぎていった。



このまま毎日が過ぎるんだろう。



なんとなく、そんな感じもしていたから、“寂しい”という感情に(ふた)をして、ただ、時が過ぎるのを待った。






「なぁ!お前、めっちゃ足速いなっ!!」



ある日の朝。急に、私の席の前に来た男子が、私に大声で言った。



「は?」




性格も可愛くない私は、不機嫌なのを隠しもせず、相手を(にら)みつけた。なのに、相手は動じない。




「お前、陸部だろ?昨日、サッカーしてたら超特急でトラックを走ってく女子がいて。なんか見たことある顔だなぁって思ってたら、まさかの同じクラスだったから!」




ペラペラと言葉を並べていく相手。だが、そこに“嘘”は感じられなかった。




「俺、神山洸夜。お前の名前は?」



「………松原…寧々。」




私の事を認識しようとしてくれた初めての人、神山洸夜。





これが、私の初恋が始まった瞬間だった。





洸夜と話すようになった事で、女子も少しずつ話しかけてくれるようになった。中には、洸夜に近づくために、私を利用しようとする奴もいたけど。






洸夜と話すことが、こんなにも自分の周りを変えるきっかけになるなんて、考えもしなかった。




洸夜は、私にとって本当に必要な人だって確信した。それと同時に、“好き”っていう気持ちも、増幅(ぞうふく)していった。





だから、勉強が得意な洸夜に見合うように、頑張って、洸夜が行くすごく頭のいい高校に進学した。


サッカー好きな洸夜の理解者になれるように、その勉強もした。



無事に、受験も成功。サッカー、バスケ、野球など、マネージャーの入部希望が多いとこは、入部テストっていう変わったものがあって、それにも合格。

合格しても、仕事がキツくて退部する人が大勢いる中、私は無我夢中で頑張った。どんなに辛くて、逃げ出したくなる事があっても、サッカーしてる洸夜を見たら、全部吹き飛んだ。





自分の気持ちが洸夜に届いていない事も、洸夜が私を“女”として見ていない事も、全部わかってた。



それでも希望を持っていたかったから、告白は出来なかった。








告白って、一種の()け。その賭けに負けたら、これからどうしたらいいのか、私にはてんでわからなかった。





言い訳ばっかりで、逃げてきた私に下った罰。




それは、初恋相手に、私だけが間近で見れたはずの大好きな笑顔で、『彼女』の報告を受ける事だった。
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