君は私の唯一の光
「私……洸夜くんと一緒にずっといられない。」




やっとのことで乃々花が言ったのは、耳を疑うことだった。




「え………ずっと一緒にいられないって、どうして?」




今まで、乃々花にそんな事言われた事ない。なんで?っていう疑問符(ぎもんふ)が頭を支配した。




「……………乃々花は、俺のこと恋愛感情で好き?」



根本的な事だけど、大切な事。乃々花が、本当に俺を好きなのかも怪しくなってしまった今、確認する必要があった。




「………好き…だよ。」



小さいけど、しっかりした声で言ってくれた。すごく安心する。


まぁ、これでNoって返事が来ても、好きになってもらえるように頑張るだけなんだけど、やっぱり辛いから。




「じゃあ………なんで…?」




これを聞くと、乃々花は思いっきり俯いてしまった。長くて綺麗なストレートの髪が、乃々花の顔を隠す。




「私………余命宣告…されたの。」



「………は?」




余命宣告…って、乃々花が?




「いつまで…?」




「あと、4年。20歳まで。」




信じたくない……。乃々花がそんなにすぐこの世からいなくなるなんて。だって、まだ15じゃん。普通なら、この歳から夢とかに向けて頑張り始めるのに。それがなく、“死”を意識してこれから生きていくのか?




「マジ………なのか…?」




乃々花は、ゆっくり首を縦に傾け、肯定した。さっき振られた時よりも、ずっとキツい。俺がこれからどうするかの前に、俺と乃々花が積み上げていける未来は、5年もないんだって、確定されてしまった。





「治療は?」




今まで、怖くて聞けなかったことを聞く。治療法がないって言われたら、どうしていいのかわからなかったから。でも、余命宣告された今、聞かないとどうしようもない。





「…………1つだけ。」





乃々花の一言に希望が見出せた。0じゃなくて、本当に良かった。


ただ、乃々花の覇気(はき)のない感じが、俺を不安にさせる。さっき一瞬気分が高揚したが、またすぐに氷点下まで下げられた。




「どんな方法?」




乃々花がこんな顔するってことは、よっぽど難しいんだろう。けど、それも乗り越えなきゃ乃々花の未来は、すぐになくなってしまう。




「手術。」




半分諦めかけたような声で言われた。そんなに難しいものなのか?

ファブリー病をネットで調べた時、治療法は手術と酸素の注入って記載されていた。今は普通に行われてるみたいだったから、乃々花もできるんだろうって思ってたけど。




「そんなに、難しいのか………?」


「成功率は、30%未満。私の体が弱いから、低いんだけど…………。」





30%………。めちゃくちゃ低い。乃々花は、そんな窮地(きゅうち)に立たされてるのか…?



4年生きるか、たった30%に賭けるか。



そんなの怖すぎるだろ………。俺より、乃々花の方がずっと辛い。




でも…………残された方も、同じくらい胸が痛い。






「乃々花は、手術したいって思ってる?」




乃々花が手術を受けるなら、全力で祈る。


逆に受けないんなら、残された時間を目一杯幸せだったと、乃々花が最期に思えるように過ごす。




どちらにしろ、乃々花次第だ。




「私は………手術、受けようと思ってる。」
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