君は私の唯一の光
【said 乃々花】


「では、11月4日に。」


「はい。よろしくお願いします。」



深谷先生は、静かに病室を出て行く。


今、先生が来てたのは、手術の日程が決まったからだ。


11月4日……。


成功するか、失敗するか。それで、私が16歳の誕生日を迎えられるかが決まる。



もう10月31日。ハロウィンだね。


一時(いっとき)のゴタゴタも収まって、ここ最近、本当に平和な日々を送っていた。もちろん、洸夜くんとは付き合ってて、前となんの変わりもなく。





手術の心配がないと言ったら、嘘になる。そりゃ、怖くない人なんていないでしょ?不安で押しつぶされそう……。


それでも頑張れるのは、やっぱり洸夜くんのおかげ。“生きたい”って、思わせてくれた。“死”を望むなんて、絶対ダメだって、教えてくれた。


心が弱って周りとの壁を作った私に、笑顔で元気付けてくれた。上手に気を遣ってくれたりして、居心地がいい場所を作ってくれた。退院しても、お見舞いに来てくれた。私を好きになってくれた。



この年頃の女の子だったら絶対できる事も、一切できなくて、やるせない日々の中、洸夜くんに会ったんだ。毎日が明らかに充実していって、笑顔が増えて、幸せって思える時が増えて……。



“乃々花”っていう名前の由来みたいに、いろんな人を支えられるような存在じゃなかった私。それを、洸夜くんが変えてくれた。


周りに支えられてばっかりの私に、洸夜くんは『乃々花が必要』って言ってくれた。その言葉たちに、私は救われたんだ。



「洸夜くん、会いたい……。」



ぼそっと呟いた嘆きは、あっという間に去っていった。



毎日を彩るもの。それは、特別な出来事じゃなくて、笑顔や幸福感、それと大切な人たちの存在なんだって、ここ最近で、ようやくわかった。洸夜くんと出会って、毎日が変わって。



ありきたりな毎日でも、今生きれているこの時を、大切にしたい。それが、私たちが生まれてきたことへの感謝に繋がると思う。



これからの私の未来があると信じて、前を向いて生きよう。



そうすればきっと、明るい将来に導いていかれるはずだから。



どうか、私の人生の糸が、ここで切れませんように。



その糸が、洸夜くんの糸と共に、いられますように。
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