君は私の唯一の光
【said 乃々花】




由奈さんが泣いてるのを、初めて見た。




いつもすごい笑顔をみんなに見せてて、涙なんて欠片ほどもなかった。




それだけ、心配してくれてたんだ……って感激して、こっちまで泣けてくる。





「うぅ……、戻ってこれて、よかった。」




「もう大丈夫だよ。これからは、いっぱい外に行けるよ。」





由奈さんは、私の背中を優しくさすってくれる。さっきまでの恥ずかしさは吹っ飛んで、安心感でいっぱいになった。もう、大丈夫だって。






私も由奈さんも落ち着いて、ほっとひと息……って思ったら、急に由奈さんは、怖い顔になった。





「では、ここからは看護師として。」




いつもと違うピシッとした声に、私と洸夜は背筋が伸びる。




なんか……やらかしちゃった?





「乃々ちゃんが目を覚ましたのは、いつ?」





「えっと……1時間前くらい…?」




「うん、7時頃だった。」






それがどうしたんだろう?洸夜も、何が何だかわかっていない様子。





「洸夜くん。」




「は、はい!」




「私、君に何か頼んでなかったっけ?」





由奈さんの言葉をしばらく考えた後、しまった!って顔をした洸夜。



なんか、しでかしたのかな?





「頼まれました。………乃々花が目覚めたら、すぐにナースコールする様にって。」





「だよね?」





あちゃー。そりゃあ、怒られる。だって、かれこれ1時間は起きてるわけだから。





「深谷先生に今から連絡するから、謝ってね。」





「……はい。」






洸夜、意気消沈。がっくり項垂れてる。珍しっ。






言った通り、ものの1分で深谷先生は駆けつけてくれた。





そして、洸夜は怒られた……。





「乃々花ちゃん、多分君の病気は完治したよ。ただ、精密検査が必要だから、もうしばらく入院しててもらうね。」





「……はい!」





嬉しさで、胸が打ち震える。やっと、この時が来たんだって。





「……今まで、よく頑張ったね。乃々花ちゃんが治ってくれて、よかったよ。」





「深谷先生……。」





さっきまで引っ込んでくれてた涙が、また戻ってきた。目に溜まる。





深谷先生と一緒に来た岩崎先生も、おめでとうと言ってくれた。






「やっとだね。10年ぶりの外、これまでの分も楽しみなよ。」






みんな、ありがとう。私がここにいられるのは、みんなのおかげ。






由奈さん、いつも笑顔で接してくれて、ありがとう。




深谷先生、今まで病気の治療について、いろいろとありがとうございました。




岩崎先生、薬のこと、私の体調や健康を気遣って、調節や調合してくれてありがとうございました。






「ありがとう」じゃ、言い表せないくらいに、感謝しています。





これまで支えてくださって、本当にありがとうございました。





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