君は私の唯一の光
しかもさ、乃々花の後ろでは俺の先輩とその彼女さんがこっち見てるんだよ。




「やってもらったの?」




「う、うん……。どう、かな?」




「めっちゃ似合う。かわいすぎて、惚れ直した。」




せっかくだから、先輩カップルに思う存分見せつけてやる。




「ほ、ほんと!?」



「うん、めっちゃくちゃかわいい。」



「ありがと!洸夜も、すごくかっこいい!」



毎回褒めると必ず褒め返してくれる乃々花。もう、どんな仕草もかわいすぎる。




「ありがと。寒くないか?」



「うん!全然寒くないよ!」



「ならよかった。じゃあ行こっ!」




手を繋いで、去年見つけたとっておきの場所に向かう。



散策をしていたら見つけた、花火が大きくキレイに見える場所。



生徒も教師も、もう大半が外に出ていて、校舎に残るのは俺らだけ。暗い校舎は、慣れていないと怖いらしく、乃々花は俺の腕にピッタリとくっついている。





かわいそうになるけど、どうしてもあそこでサプライズをしたいんだ。





「乃々花、着いたよ。」




まだ花火は出ていないから、ほぼ暗闇の教室。電気をつけるとムードが失われるから、つけられない。




「洸夜、コウヤサイってここでやるの?」



「誰もいないけど」と不安気に俺を見る乃々花。



「いや、ここにいるのは俺らだけ。みんなはあっち。」




指した窓を見て、乃々花は不思議そうに再び俺を見た。




「みんなのところ、行かなくていいの?」




「うん。ここじゃ嫌?」




「ううん、全然!」




そう言うと、ギュッと俺に抱きついた乃々花。



普段、こんな大胆なことを人前で自らしない乃々花に拍子抜けした。





「……乃々花?」




「やっと、2人っきり。デート楽しかったけど、洸夜がいろんな女の子に見られてるの見て、ちょっと妬いた……」




まさか、そんなふうに思ってくれてたなんて、思ってもみなかった。乃々花は、そういうことには無頓着かと思ってたから。




「俺も、乃々花のことジロジロ見る男に妬いた。蹴りたくなったもん。」




俺より断然小さい身体をそっと抱きしめかえす。




「気のせいじゃない?私のこと見る男の人、いないでしょ。」




「でも、サッカー部エースの洸夜に本気で蹴られたら、みんな骨折れちゃいそう」と、天然を披露している乃々花。ちょっとは自覚してほしいんだけど、このちょっと変な思考回路を楽しんでる俺もいる。……どっちもどっちだな。




バン————




背後が光ったと思ったら、大きな音が耳に響いた。やっと、花火が打ち上がったんだ。



立て続けにどんどん打ち上げられる花火は、カラフルで眩しい。




「キレイ……」




しみじみと呟く乃々花は、いつのまにか俺にバックハグされている状態に変わっていた。




俺からしたら、花火より乃々花の方がキレイでかわいい。




俺って、乃々花にベタ惚れだよな……と常々思う。




花火の打ち上げが盛り上がってきたところで、乃々花にプレゼントを渡す。




「乃々花、目閉じて。」




「え、今?なんで?」




「ちょっとだけだから。」





不満そうな顔をしながらも、目を瞑ってくれた乃々花の手に、そっと箱を握らせる。




「……開けていいよ。」




「……え、なにこれ…」




長細い箱を見て、疑問を顔に表す乃々花。戸惑ってるのが、すごくわかる。




「プレゼント。」




「……なんで?今日は洸夜の晴れ舞台で、私はなにも……、あ!」
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