身ごもり婚約破棄しましたが、エリート弁護士に赤ちゃんごと愛されています
「ただいま」

夕刻、修二が帰ってきた。

「ぱあぱ! ケーキちゅくったのよ!」

玄関に迎えに奔り出たまりあが早速ネタばらしをする。もったいつけることができない二歳児だものね。しょうがない。

「え、ケーキ?」

まりあに手を引かれながらリビングに入ってきた修二は、食卓にのぼっているパウンドケーキと隣のボウルの生クリームを見た。

「まりあがね、でこれーしょんするの。さいごにね!」

まりあはケーキの仕上げは自分がするのだと威張っている。

「陽鞠、すごいな。焼いたんだ」
「まりあとね。まりあと、パパにいつもありがとうしようって話になったのよ」

背中を向けて、夕食の肉じゃがを温め直しながら言う。ああ、修二がどんな顔をしているか想像できてしまうな。そうっと伺い見ると、修二は感動でちょっと泣きそうな顔をしていた。

「陽鞠、まりあ、ありがとう!」
「どーいたしまして!」
「じゃあ、ごはん食べちゃおう。ケーキはデザートだからね」

私は修二の感動に飲まれないように、わざとつっけんどんに言ってごはんをよそった。
すると、そのとき、玄関チャイムが鳴った。

「なんだろう」

インターホンに出ると、女性の声が聞こえた。

「江田沼法律事務所の者です。和谷先生はこちらでしょうか」
「え? あ、はい。おりますが」

修二に目配せする。修二はインターホンに代わり、驚いた声をあげた。

「矢沢くん? どうしてここに」
< 101 / 186 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop