身ごもり婚約破棄しましたが、エリート弁護士に赤ちゃんごと愛されています
修二にまりあの認知をしたいと言われた。親権者として認めてほしいと。
本来なら喜ぶべきところなのかもしれない。しかし、修二との関係に不安を感じていた私は、それがまりあを奪うためだけの算段に思えてしまった。

こうして少し時間が経てばわかる。修二は純粋にまりあを愛しているが故、提案しただけなのだ。
私からまりあを取り上げたいだなんて邪推だ。
そして、修二が見せてくれた細やかな愛情も、きっと嘘偽りはないのだろう。

問題は私だけになった。
浮彫になったのは、自分の性格。
修二とやり直そうと思った。お互いに三年で成長し、今度こそ向き合えると思った。トラブルが起こっても逃げずに、ふたりで対処していきたいと思った。
その矢先にこれだ。私はやっぱり何も成長していない。
修二を信じられなかったし、問題に対処する前に逃げ出してしまった。今も、まりあを悲しませながら、勇気を出せずに立ち止まっている。自分がこんな卑小な人間だったことに腹立たしさすら覚える。

こんな私じゃ、やっぱり修二とやり直すのはやめたほうがいいに違いない。きっと、前よりもっとひどい喧嘩をして、まりあを傷つける形で別れることになる。

「……今だって、まりあを傷つけてるもんね」

私はぼそりと呟いた。まりあは寝入ったばかり。開けた窓から涼しい風が入り、夏の星が見えた。
きっと、今夜も泣きながら起きるのだ。眠れるときにしっかり眠ってほしい。

日付が変われば三十歳。
二十代は修二と過ごした。大学に入って修二と出会い、淡い恋を経験し、大学を卒業して再会した。恋をして将来を誓って、まりあを身ごもって別れた。

そして今、再び出会ったのに。私はまた修二との別れを選ぼうとしている。

「まりあ、ごめん」

私はまりあの額にキスをした。

「意気地なしのママでごめん」


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