身ごもり婚約破棄しましたが、エリート弁護士に赤ちゃんごと愛されています
ピクニック広場の木陰にレジャーシートを敷き、お昼ごはんにした。
梅雨の真ん中とは思えない爽やかな空気、注ぐ初夏の日差しは眩しい。
緑の芝生を波立たせて風が吹き抜け、私たちは心地よさに目を細めた。

「まりあ、ごはん美味しいねえ。たくさん食べてね」
「うん!」

一生懸命おにぎりをほおばり、ニコニコ笑う私の最愛の娘。ほっぺたのごはん粒を取ってぱくっと食べると、さらに楽しそうな笑い声をあげた。

ああ、この子を幸せにしてあげたい。
世界で一番幸せな女の子にしてあげたい。

それなのに、私は駄目だなあ。自分ばっかり苦しくて、いつもぐるぐる同じところを回っていて。修二と再会する前は、ひとりでも大丈夫だって思っていたのに、結局てんで弱虫で参ってしまう。

「ママ」

不意に、まりあがごはん粒だらけの手をのばし、私の頬に押し当てた。

「なあに? まりあ」
「よしよし」

まりあは年下の子やぬいぐるみにするように私を撫で始めた。おにぎりでべたべたカピカピの手で、何度も何度も私の頬や頭を撫でる。

「そんなにしょんぼりしてたかなあ」

私は苦笑いで尋ねる。まりあは大きな瞳で私をじいっと見つめている。

「ママ、ないてるの? かわいそう」

まりあの言葉に本当に涙が滲んできた。
まりあの方がよっぽど可哀想だ。
パパのことを話さなくなったまりあ、夜泣きが続いているまりあ、今私を慰めようとしているまりあ。
私の娘はこんなにも思いやり深くて優しいのに。私は何も返せていない。

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