身ごもり婚約破棄しましたが、エリート弁護士に赤ちゃんごと愛されています
叫びだしたいような悲しい気持ちで、まりあを覗き込む。

「まりあ、ごめんね。まりあ、本当はパパに会いたいんだよね」

まりあは大きな目をさらに丸くして、その後、こくんと頷いた。

「まりあ、ママだいすき。パパもだいすき」

私はまりあの小さな身体を抱き締めた。私に似た小柄な体躯、修二に似た綺麗な瞳。まりあは私の宝物であり、修二の宝物でもあるのだ。
そして、まりあにとってもパパとママはかけがえのない存在。

私が変わらなきゃ。
三年間と同じではいけない。
修二のため、まりあのために。
そしてなにより、私のために。私の心にある変わらない愛のために、もう一度踏み出してみよう。

「まりあ、今夜パパに会いに行こう」
「パパに?」

まりあの声が嬉しそうなものに変わる。私は力強く頷いた。

「うん、パパとお話ししに行こう」
「うん!」
「ずっと一緒にいようって、言おう!」

そのときだ。背後で足音が聞こえた。背中に声が響く。

「ごめん。タイミングとしてはフライングだな」

振り向けば、そこには修二が立っていた。
手には色とりどりのバラの花束。
Tシャツにジーンズ姿、スニーカー。大学時代みたいにラフな格好で、照れくさそうに笑っている。
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