身ごもり婚約破棄しましたが、エリート弁護士に赤ちゃんごと愛されています
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まりあと修二を会わせる。
頭ではそうしたほうがいいと思いつつ、私はなかなか修二に連絡を取れなかった。まずは気まずい。スマホにメッセージを送るとして、なんと切りだせばいいのかわからない。手紙も同様だ。
そしてどこかで、このまま返事をせずにうやむやにしてしまいたいずるい気持ちもまだあった。
手紙を受け取ってからちょうど一週間目にスマホが鳴った。
着信を知らせる画面に表示されたのは和谷修二の名前。
私のスマホが変わっていないことに賭けて電話してきたのだろう。ちょうど昼休みを取ったタイミングで、近所の牛丼屋さんに向かうところだった。返事を放置してきた罪悪感もある。少し迷って通話をタップする。
「もしもし」
『……陽鞠か?』
懐かしい声だった。実に三年ぶりに聞く修二の声だ。
「ええ、久しぶり」
私はなるべく平静を装って答えた。場所は駅前のロータリーで、それなりに人は多い。銀行横の路地に入り、声を聞き取りやすくする。
『手紙、読んでくれた?』
「……ええ」
『それでどうかな』
修二の声は遠慮がちだった。傲慢ではないけれど、いつも強気な修二にしては弱々しい口調だ。
『まりあに会わせてもらうことはできるかな』
今、修二がどんな顔をしているか、電話越しでも想像できる。少し困ったように眉を寄せて、優しく微笑んでいるのだろう。
強引なところもあるし、やり手弁護士にはふさわしい押しの強さもある。だけど、心根が優しく真心があるので、相手に寄りそうのは本当に得意だ。