身ごもり婚約破棄しましたが、エリート弁護士に赤ちゃんごと愛されています
すると、まりあは大声で叫んだ。

「ぱあぱー!」

そのまま修二の腕の中に飛び込んでいく。修二が顔をぎゅっと歪め、それから涙をこらえるようにまりあの肩口に顔を埋めた。

「まりあ、まりあ。やっと会えたね。ずっとずっと会いに来られなくてごめんね」
「ぱあぱ。ぱあぱ」

まりあは覚えたての言葉のように何度も呼ぶ。それは修二には何より嬉しいことだろう。

「まりあ、会いたかったよ。まりあ」

父娘の対面の姿に、不覚にも涙が出そうになってしまった。
そして、もっと早くこうするべきだったのだと痛感した。このふたりを引き裂いてきたのは私だ。私から修二に言えばよかったのだ。娘の顔を見せたいと。
修二は養育費を送り、ときたま届く写真を眺めながら、ずっと娘と会うことを夢見てきたのだろう。

「陽鞠、ありがとう」

修二が絞り出すような声で言った。



まりあを子ども用の椅子に座らせ、ランチをスタートした。
まりあは持ってきたビニールのスタイにリゾットをこぼしながら食べまくり、いちごとメロンも山ほど食べた。ムラ食いなところがあって、機嫌が悪いと小食だったりごはんを拒否したりする子なのに、たくさん食べていたということは楽しかったのだと思う。

修二は自身の食事もそっちのけでまりあの一挙手一投足に魅入っている。そもそも子どもと触れ合わない生活をしている独身男性にとって、二歳児の食事はなかなか迫力がある光景だ。スプーンもフォークも使うけれど、めちゃくちゃに汚して好きなように食べるのだから。
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