身ごもり婚約破棄しましたが、エリート弁護士に赤ちゃんごと愛されています
「まりあ、可愛いでしょう」
「ああ、本当に可愛い」

修二がまりあを眺めながらしみじみと言う。

「陽鞠はあまりいい気分はしないだろうけれど、今日直接会って、血の繋がりっていうのかな、そういうものを強く感じたよ。まりあは俺の子だって、すごくすごく実感した」

修二の言葉には感動と喜びが滲んでいる。本当に嬉しかったというのが私にも伝わってくる。

「修二に、よく似てるものね」
「そうか? 目や眉毛の感じは俺かもしれないけど、髪の毛や口元は陽鞠に似ていると思う」
「身長も私似。ちっちゃいわ」
「まだ、わからないさ。俺は百八十センチあるからなあ」

まるで普通の夫婦のような会話だ。そう思ってすぐに打ち消した。
私と修二の関係は三年も前に終わっている。

「まりあに会って区切りになった?」

私の質問に修二が首を傾げた。

「区切り? ああ、まあやっと会えたって気持ちはあるけど」
「あのね、修二。結婚したい人がいるなら、まりあへの養育費はなくしてもらって構わないからね。私ひとりで稼げるし、うちは両親もいるし。枷は少ない方がいいでしょう」
「はあ?」

いよいよ修二が変な顔になる。

「結婚したい相手って俺が? そんな人いないけど」

修二のおずおずとした回答に今度は私が変な顔になった。

「え? てっきり、結婚か何かが決まって、その前に娘に会いたいとか……違うの?」

修二は気の抜けたような表情になって、笑った。

「違う違う。普通にまりあに会いたかっただけ。本当はもっと早く会いたかったけど、陽鞠の気持ち的には嬉しくないだろう? だから、ちょうど三年経つまで会わないようにしようって決めてたんだ。けじめっていうか」
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