身ごもり婚約破棄しましたが、エリート弁護士に赤ちゃんごと愛されています
『離れて住む娘がいるって事務所には言ってあるし、保育園のお迎えのために時短申請もしたところ』

もう申請までしてしまったとは。そうとう浮かれているようだ。

「なんで、私の意見を聞いてからにしてくれないのかな」

両親とのやりとりからの苛立ちが増幅する。そう、両親と修二が勝手にタッグを組んでいるところがまた気に食わない。私の心情だけ置いてけぼりなのだ。

「修二の手を借りる気はないから」
『だけど、物理的にまりあのお迎えの手がないんだろう』
「三月いっぱいファミリーサポートを頼めないか市役所で聞いてみる」
『あれってすぐに決まるものじゃないだろう。お義父さんたちの旅行、週末からだって聞いてるぞ』
「そうかもしれないけど、全部こっちでやるから、修二は関わらないで」

うちの両親から頼んでおいて、こんな態度はよくないとわかっていた。修二は振り回された格好になってしまう。だけど、勝手に決めてしまう両親にもどんどん踏み込んでくる修二にも苛立ちと怒りを抑えられない。
きっと、修二も怒るだろう。穏やかなタイプじゃない。弁は立つし、すぐに言い争いになる。だから、私たちは別れたのだ。

『落ち着いてくれ、陽鞠』

しかし、修二の声音は静かでけして怒っている様子ではない。
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