身ごもり婚約破棄しましたが、エリート弁護士に赤ちゃんごと愛されています
『陽鞠からしたら嬉しくはないよな。保育園の先生に説明するのも嫌だろうし』

そうだ、言われてみればそこもすごく嫌だ。別れた人で、まりあの父親です、だなんて。
まりあと修二は顔立ちが似ているので、変な疑いをかけられることはないだろうけれど。

『俺、離婚訴訟も扱うことあるけどさ。大騒ぎして別れた夫婦でも、子どものイベントは集まったりしてる家も多いよ。子どもは大人の事情に振り回されてるだけだから』

その言葉にハッとした。そうだ。まりあは何も悪くない。私の仕事が忙しいことも、両親の旅行だって悪くはないのだ。ただ、まりあが振り回され、悲しい思いをしないで済むように尽くすことはできる。それを私ひとりのこだわりで拒否しちゃいけない。
修二は迎えだけで泊まらないと言ってくれている。ここまで譲って、さらに職場にまで申請して、協力してくれようとしている修二。
今も、私と喧嘩しないように説得を試みてくれている。

なんだか、修二、大人になったなあ。三年前はこんな時、お互い喧嘩しかできなかった。
私はひとつ息を吐いて、答えた。

「わかった。修二の力を借りたい。いいかな」
『ああ、もちろん』

修二が嬉しそうに答えた。

『俺にできることはなんでもするよ。まりあの父親なんだから』

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