身ごもり婚約破棄しましたが、エリート弁護士に赤ちゃんごと愛されています
「うん、替えがあるから。それよりトレパン、昨日三つとも洗いに出したのわかった?」
「たらいにつけてたヤツでしょう。洗ったわよ」
「ありがと」

母に感謝をしつつ、メイクを済ませてしまう。頭の中では、今日トレーニングパンツがないので、まりあをなんと言って説得しようか考えていた。まだトイレが完璧でないまりあにはトレパンは誇りであり、上手くできなくて汚してしまっても、毎朝履いていきたいものなのだ。そうだ、オムツにパンのヒーローのシールをはろう。今日だけ特別オムツだよ~って。ごまかされてくれるといいんだけど。

髪の毛をまとめてお団子を作る。カットソーとチノパンという動きやすい仕事服を選ぶと、まりあの洋服を手にダイニングへ戻った。父はそろそろ出勤時刻、バトンタッチだ。

「お父さんありがとう」
「まりあ、手も顔もカピカピだぞ。洗ってやんなさい」
「うわ、ホント。すごいなあ」

まりあは全身でおにぎりを食べたようで、米粒がパジャマに飛び、手も顔も半乾きの米でいっぱいだった。着替えさせる前でよかった。
まりあの身支度を整え、自分の分の朝食のおにぎりをぱくぱく食べるともう時間だ。

「それじゃあ、行ってきまーす」

私はまりあを抱っこ紐に入れ、玄関で声をあげた。小柄なまりあはまだまだ抱っこ紐で運べるサイズ。でも、きっと一年後は抱っこ紐の出番はほとんどなくなっているんだろうなあ。

一月、朝の空気はきりりと冷たい。
埼玉県南部のこの街は大きな幹線道路と畑、工場と住宅地が混在するベッドタウンだ。私の生まれ育った街。都会には近いけれど、ほどよく田舎で住みやすい。
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