身ごもり婚約破棄しましたが、エリート弁護士に赤ちゃんごと愛されています
夕方になり修二からメッセージがきた。手元にいつもスマホは持っている職場なので、お客さんが切れたタイミングで確認する。

【今、向かっています】

私はすかさず返信。

【ありがとう。ごめん、家、綺麗じゃない】

先に言っておかないと惨状に驚かれてしまう。

【問題ないよ】

修二からのメッセージはそれで終わり。もう気にしていても仕方ない。まりあは修二に任せて仕事しよう。
十九時半に閉店し、店内の片付けやゴミ出し。在庫や入荷予定のチェックをして、レジの閉め作業。

「店長、今日なんか急いでます?」

佐富くんに声をかけられ、ぎくっとする。別れた男とは距離を置くし会う気もない言った手前、その男に子どもを見てもらっているとは言いづらい。別に佐富くんと付き合ってるわけでもないから、完全に私の見栄なんだけど。

「娘が今朝、不機嫌だったから。早く帰ってあげたいなあ~って」
「そうだったんですね。店長、急に忙しくなったから、娘さん寂しがってますよね」

佐富くんが親身な表情で言う。

「閉め作業は代われないですけど、片付けなんかは俺の方でぱぱっとやっちゃいますから。なるべく早く帰りましょう」
「あ、ありがとね。気ぃ遣わせちゃってごめんね」

嘘をついているわけでもないのに、なんだか彼の気遣いに申し訳ない気持ちになる。
佐富くんは爽やかに笑った。

「俺、店長のこと尊敬してるんで」
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