身ごもり婚約破棄しましたが、エリート弁護士に赤ちゃんごと愛されています
「ママが帰るまで待つって頑張ってたんだけどな。今さっき」

まりあはソファで修二の膝にほっぺたをくっつけて眠っている。

「かなり寝ぐずりしたんじゃない?」
「そうでもないよ。ママに会いたいって少しだけ泣いたかな」
「まりあ~」

私は膝をつき眠る娘の顔を覗き込んだ。目の端の涙のあとに胸がいっぱいになる。

「陽鞠の店、駅前の花屋だろ? まりあとそっちを通らないように帰ったんだ。陽鞠の顔を見たら寂しくなると思ったから」

修二は限りなく優しい瞳でまりあを見下ろしている。完全にパパの表情だ。

「いい判断だよ。修二がいて嬉しくても、私がまだ帰ってこないって知ったら、大騒ぎしてたと思うもん」

私は修二の膝からまりあを抱き上げ、二階に連れていく。シャワーもしてくれたようで、まりあの身体は石鹸の匂いがする。髪の毛はふわふわに乾かされていた。

寝室に寝かせて戻ると、食卓にはシチューが用意されていた。

「ごはんは自分で盛って。どのくらい食べられるかわかんないし」

修二手作りのシチューらしい。となりには小松菜と油揚げの炒め物がある。まりあと食べたのだろう。具材は細かく食べやすく切られている。

「え、すごい。こういうの作れるの?」
「シチューなんて煮込んで素を入れるだけだし、炒め物も工程少ないしな。それより、味濃すぎなかったか見てくれるか? 濃い味になれさせたくないだろう」
「うん。いただきます」
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