身ごもり婚約破棄しましたが、エリート弁護士に赤ちゃんごと愛されています
「寒いねえ。まりあはあったかいなあ。カイロみたいだよ」

まりあのまつげのびっしり生えた大きな眼を覗き込む。

「まあま」

まりあがにぱっと笑う。まりあは本当に可愛い。将来はきっとものすごい美人になるだろう。
体格は私に似て小柄だけど、顔立ちがこの子の父親にそっくりなのだ。この子の父親・修二は、誰もが振り返るほどのイケメンだったものなあ。ついでに頭も似てくれたらいい。父親と同じく法学部をトップの成績で出て司法試験に受かるくらい……。

「性格は似なくていいわよ~」

歩きながら、まりあににっこり微笑み返した。まりあはなんのことかわからないので揺れに合わせて何事かひとりごとを喋っている。

修二と別れてもう少しで三年が経つ。
お腹の中で四ヶ月だったまりあは現在二歳五カ月になった。私がひとりで産み、ひとりで育てた。……いや、それは言い過ぎ。
私の育児や日々の生活は全面的に私の両親が手を貸してくれている。婚約状態で式の日取りまで決まっていた私たちが破局し、私がお腹のまりあとともに実家に帰ったとき、最初こそ両親は怒っていた。修二くんと仲直りをしろと散々言われ、何度も喧嘩した。結局折れ、出産までサポートしてくれ、今はまりあの育児を手伝ってくれている。ありがたいことだ。
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