身ごもり婚約破棄しましたが、エリート弁護士に赤ちゃんごと愛されています
「あのさあ」

さすがに苛立った声を上げたら、くい気味に言われた。

「陽鞠が日頃から誘惑するような態度を取ってるんじゃないの?」
「はあ!?」

私の怒声に、修二は冷淡な口調だ。

「企業のセクハラ問題でもたまにあるよ。仕事上可愛がってもらいたくて妻子持ちの上司に色目使った女子社員が、相手に本気になられて慌ててセクハラを告発とかね。乗る男も馬鹿だけど。だいたいスマホのメッセージ履歴を見て、女子から誘ってる文言を見つけて、和解に持ってくことが多い」
「私が佐富くんにそういう態度を取ったっていうの?」
「今言ったのは一例。中には、本当にそんなつもりなかったのに、思わせぶりに見えたっていうケースもある。隙だらけな態度に、気があると勘違いしたとかな」

私は湧き上がる怒りを抑え込み、手がぶるぶる震えるのを感じた。

「私が思わせぶりな態度を取って隙を見せたから、佐富くんが勘違いしたって言いたいんだ」
「まあ、俺にはわからないけどね」

修二は冷たい声だ。なんなのよ、なんなのよ、修二。あんた何様?

「修二はまりあの父親ではあるけど、私のパートナーではないわ」

私は憎々しく言った。

「今後、私の知り合いにああいった自己紹介をするのはやめてもらえる? 不愉快だから」
「そうか、気をつけるよ」

修二も苛立った口調で返す。
ああ、思い出してきた。私と修二は、最後の方こんな喧嘩ばかりをしていた。互いの態度や言葉尻をつかまえて苛々とぶつかり合うことばかりしていた。
傷つけあうためだけに一緒にいるのに疲れて、私たちは別れを選択したのに。
三年も経って、また同じことを繰り返している。
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