身ごもり婚約破棄しましたが、エリート弁護士に赤ちゃんごと愛されています
無言のまま帰宅し、私は夕食を作り始めた。修二は何も言わなくてもお風呂を掃除してくれる。その後は、まりあが遊ぶ横でPCを開き仕事をしている様子だ。

食事はさほどかからずに出来上がった。しかし、食卓に並んでつくのが嫌だ。
こんな不細工な気持ちで食事をしたくない。
修二ものろのろとしていてなかなかダイニングテーブルにこない。私は声をかけたくないし……。
すると、突然まりあが大声を出した。

「こらー!!」

私と修二は驚いてまりあを見る。まりあは床に立ち、拳を握りしめて、私と修二を交互に睨んでいる。

「だめ! けんかだめ! けんかしたらごめんれしょ!」
「まりあ?」
「きらいっていったらだめなんらよ! ごめんしなきゃなんらよ!」

まりあはものすごく怒っている。それは、私と修二の険悪なやりとりから無言の時間を眺めていたせいだろう。
まりあはきちんとわかっているのだ。パパとママが喧嘩してしまったこと。喧嘩をしたらごめんって言わなければならないこと。

「まりあ、ごめんな」

修二が先に言い、まりあの前にひざまずいた。まりあはまだ怒った顔で言う。

「ちがうよ。ままにれしょ!」

まりあに言われては修二も無視できない。というより、私と修二の負けだ。立ち上がった修二が、私に向き直った。

「陽鞠、嫌なことを言ってすまなかった」
「別に……それは私もだし」

もじもじしている私たちの横で、まりあがもう一度大声を出す。

「ごめんなさいは!?」

きっと保育園で数多の喧嘩とその時の保育士の対応を見てるんだろうなあ。真似をする真剣なまりあが可愛い。
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