身ごもり婚約破棄しましたが、エリート弁護士に赤ちゃんごと愛されています
修二はあれ以来、私に何も言ってこない。程よい距離の頼りになる同居人に徹してくれている。それが居心地よく暮らすために必要なことだとわかっているのだろう。私を惑わせたくないという優しさかもしれない。
修二に気持ちの面で報いることはできない。だけど、労働の報酬的な御礼は要ると思っている。そういう線引きが必要だとも感じている。
仕事用具などのプレゼントはするとして、“まりあと作ったケーキ”という報酬は娘大好きパパには格別なものになるのではないだろうか。

休みの木曜日、私は早速計画を実行することにした。

「まりあ、今日はケーキを作ってパパにプレゼントするよ!」

まりあはよくわからないようできょとんとしていたけれど、そのうちケーキという単語と作るという単語が結びついたようだ。

「ばんざーい」

両手をあげて喜んでいる。まりあにお願いするのは飾りつけだけですけどね。
ふたりでショッピングモールへ出かけ、ひと通りの器具と材料を揃えて帰った。
初めての人間がいきなりケーキを作れるかといったら、当然一ミリの自信もないので、ホットケーキミックスにご出陣いただいた。これさえあればだいたいそれなりの味になるらしい。丸い型も買ったけれど、泡立てないタイプのケーキになりそうなので、パウンド型を使用することにした。この型は昔、母が買ったもので、家にある。
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