ズルくてもいいから抱きしめて。
会社に戻り、真っ先に上司である天城さんに高木さんとのやり取りを報告した。

「えっ、マジかよ!うちから“shin”の初写真集を出せたら社長賞ものだな!」

そう言うと、天城さんは私の頭をガシガシと撫でた。

「ちょっっ!天城さん!髪の毛グチャグチャになります!」

私が慌てたように言うと、天城さんは「悪かったな」と笑いながら私の頭を優しく整えてくれた。

天城さんの手、すごく大きくてゴツゴツしてて男の人の手って感じだったな。
そう思うと、なんだか急に恥ずかしくなった。

「よし!今日は飯奢ってやるよ!」

「せっかくなので、飛びっきり美味しいもの食べさせて下さいね!」

恥ずかしさを誤魔化すように、私は天城さんの誘いに乗ることにした。



「もぉ〜〜〜!結局いつもの居酒屋じゃないですか!」

私たちは会社の近くにあるいつもの居酒屋に来ていた。

「何言ってるんだよ。ここが一番美味いんだよ。」

そう言うと、天城さんはビールをグビグビ飲んだ。

「はぁ〜〜〜今日もよく働いた!」

「はいはい、いい飲みっぷりですね。金曜日に部下と飲んでるようじゃ、いつまで経っても結婚できませんよ。」

「お前のお守りでそれどころじゃねーよ!」

天城さんはそう言ってケラケラ笑った。

天城さんは人柄が良く、上司としては勿論のこと、彼氏や夫にしてもとても優良物件だと思う。
背が高くてイケメン、会社内でもかなりモテている。
それなのに、彼女がいると聞いたことがないし、いつもこうして私とお酒を飲んでいる。

天城さんと一緒にお酒を飲むのは楽しい。
上司と部下の関係なのに、とても居心地が良かった。

男の人と一緒に過ごして、こんな風に感じるのっていつ振りだろう?
< 3 / 101 >

この作品をシェア

pagetop