ズルくてもいいから抱きしめて。
すれ違う2人の恋。

姫乃の場合

あれから、私の心はとても穏やかに過ごしている。

過去と向き合い、改めて前を向いて歩いている。

ドロドロの心が一気に晴れて、毎日が清々しく全てが順調に思える。

尊敬できる大好きな彼と、仕事でもプライベートでも一緒にいられる。

こんな幸せな日々が続いていて大丈夫だろうか?



♪〜〜〜ピピピピピピ〜〜〜♪

「あぁ〜煩い、、、まだ起きたくない、、、あともう少し、、、えっ!?うそ!!もうこんな時間!?あぁ〜〜〜今日は自分家だった!!あぁ〜〜〜どうしよう!!」

私は飛び起きて、慌てて支度をして会社へと向かった。

「はぁ〜〜〜セーフ、、、」

急いだせいで完全に息が上がってしまい、私は自分のデスクに突っ伏した。

「コラッ!何がセーフだよ。どうせ朝飯も食わずに急いできたんだろ。」

樹さんは私のそばに来て、頭をコツンとした。

「だって〜、、、樹さんは近いからゆっくり寝られて良いですね〜」

私はわざと口を尖らせ、フンッと拗ねてみせた。

「お前が遠慮して泊まりに来ないからだろ?俺はいつ来ても良いって言ってあるのに、、、」

樹さんは私に合鍵を渡してくれていて、いつでも泊まって良いと言ってくれている。

でも、今は樹さんの仕事が忙しそうなので少し遠慮していた。

会社で忙しそうにしている姿を見ているので、樹さんの負担にはなりたくなかった。

「そういえば、、、今日だろ?笹山さんの件。」

「そうですよ。今日の15時に写真集の話をしてきます。」

「15時か、、、その時間なら大丈夫そうだから、俺も一緒に行くわ。」

「分かりました。でも、無理はしないでくださいね。」

「おう。」

樹さんは、ガサッとコンビニの袋を私のデスクに置いて、そのまま会議に行った。

あっ、、、

袋の中には、私の好きな菓子パンと温かいココアの缶が入っていた。

私が起きるの苦手だって知ってるから、わざわざ買ってきてくれたんだ。

樹さんの方が忙しくて大変なのに、、、
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