ズルくてもいいから抱きしめて。
「えっと〜このマンションみたいですね。ほら、、、」

私は地図アプリを確認しながら、それを樹さんに見せた。

慎二から指定されたのは、自宅兼アトリエのマンションだった。

〜♪ピーンポーン♪〜

『はーい!鍵開いてるから、そのまま入っちゃって。』

「お邪魔しまーす。、、、うわぁ〜すごい!」

マンションの扉を開け、真っ先に目に入ってきたのは壁に飾られた沢山の写真だった。

慎二が“shin”だったなんて、未だに信じられなかったけれど、この写真を見て確信できた。

あぁ、やっぱり“shin”は慎二で間違いない。

心が惹きつけられる不思議な力を持った写真たち。

付き合っていた頃から彼の写真は好きだったけれど、この6年の間に色んなことがあって、より一層彼の写真は魅力を増した。

「いらっしゃい!車椅子の高さに合わせてあるから、姫乃と天城さんには不便な所もあるかもしれないけど、、、こちらへどうぞ。」

慎二の部屋は車椅子仕様になっており、棚の高さなどが低めに設置されていた。

初めて入るのに懐かしく感じられ、6年前とは住んでいる部屋も家具も全く違うのに、雰囲気が“慎二らしい”部屋だった。

私と樹さんは、部屋の中央にあったダイニングの椅子に腰掛けた。

「ここにはお一人で?」

樹さんが慎二に尋ねた。

「はい。最初の頃は不慣れで大変でしたけど、段々と慣れてきてここ2〜3年は何とかやれています。お二人はもう一緒に住んでるんですか?」

「えっ!?まっ、まだ私たちは、、、そのえっと、、、あの、、、」

慎二が急にそんなことを聞いてきたので、私はかなり焦ってしまった。

「ハハッ、、、その様子じゃまだみたいだね。天城さんも苦労しますね。」

「ほんと、そうなんですよね〜」

樹さんは、意味ありげに私の方を見て答えた。

「アハハ、、、さぁ、この話は終わりにして、本題に入りましょうかね。」

私は居た堪れず、無理やり話題を変えた。
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