ズルくてもいいから抱きしめて。
「樹さん、今日はありがとう。とても心強かったです!」

慎二との話を終え、私たちは樹さんの部屋に帰ってきた。

「俺はただ、隣にいただけだよ。」

「慎二と仕事すること、本当は嫌ですよね。、、、ごめんなさい。」

自分の彼女が元カレと会って、更に一緒に仕事するなんて普通は有り得ないよね。

『樹さん、本当にごめんなさい。』

私は、何度も何度も心の中で呟いた。

「すげー嫌!めちゃくちゃ嫌!今日だって、本当は2人っきりにさせたくなくて付いて行った。俺、お前が思ってるよりずっと女々しい男なんだよ。すげーダサイ、、、」

樹さんは我慢の限界だったようで、一気に吐き出して頭を抱えた。

どうしよう、、、

樹さんが嫉妬してくれてる。

可愛い、、、

どんな顔をしてるんだろう?

私は頭を抱える樹さんを抱きしめ、そのままそっとキスをした。

「いつも余裕な樹さんが、こんなに必死になってくれてるのが嬉しい。慎二の前ではあんなに格好付けてたのに、、、ふふっ」

「お前、今笑ったな!そんな風に笑っていられるのも今のうちだからな!」

「えっ!?わっ!」

樹さんは拗ねたように言うと、ガバッと私を抱えてそのまま寝室へ行ってベッドに放り投げた。

「きゃっ!!樹さん、、、?」

「俺の嫉妬心、全部受け止めよろ。」

樹さんは私を組み敷いて、ニヤッと笑った。

その顔が妙に色っぽくて、どこか怖くて、私は体の奥底からゾクゾクした。
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