ズルくてもいいから抱きしめて。
「はぁ〜やっぱり会社の近くって良いね。こんなに余裕持って出社できるのが有難い!」

「今まではお前がギリギリまで寝てたからで、今は俺が起こしてるから余裕あるだけだろ。」

「へへっ、、、そうでした。朝ご飯も用意してもらって、有難い限りでございます。」

私は樹さんに向かって拝むように手を合わせた。

「まったくお前は、、、」

樹さんは呆れたように私の頭をコツンとしたけれど、その表情はとても優しかった。

会社までの道のりを樹さんと並んで歩いていると、同僚たちの視線が気になった。

「あの、樹さん。さっきから視線がものすごく気になるのですが、、、」

「まぁ、仕方ないだろ。朝から並んで歩いてれば関係を怪しまれるだろうな〜」

「えっ、そんな呑気な感じで大丈夫ですか?出社時間ずらした方が良かったのかな、、、」

樹さんは視線に気付きながらも、全く気にならないようだった。

「俺は、お前と一緒に住んでることを隠すつもりはないよ。わざわざ言う必要もないけど、自然と知られれば良いと思ってる。だから、お前も気にせず堂々としてろよ。」

「はい、、、。」

樹さんが私との関係を隠そうとしなかったことが、とても嬉しかった。
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