ズルくてもいいから抱きしめて。
同棲を開始してからも、相変わらず樹さんは忙しそうにしていた。

新年度に向けて会社内はバタつき、朝から会議の連続だった。

私も外回りに出てしまうこともあるので、会社内で会うことがほとんど無くなったけれど、一緒に住んでるおかげで朝晩と顔を見られるし、会社で会えなくても寂しくはなかった。

樹さんはそうなることも考えて、同棲を提案してくれたのかもしれない。

〜♪〜♪〜♪〜

スマホの着信音が鳴り、画面には“笹山 慎二”と表示されていた。

「はい、もしもし慎二?」

『姫乃、この間の返事遅くなってゴメン。」

「ううん、大丈夫。それで、、、どうかな?」

『うん、、、引き受けることにしたよ。」

「えっ!?本当!?ありがとう!!」

『正直、まだ怖いけど、“俺の写真を多くの人に見てもらいたい”っていう気持ちの方が大きかったから。」

「出版を決めてくれて、本当にありがとう。慎二のことを公にするかどうかは、これからゆっくり悩んでくれて大丈夫だから。編集の担当者も決めて、また改めて打ち合わせしていこう。」

慎二との電話を終え、私は叫びたい衝動を抑えてデスクの下でガッツポーズをした。

早く樹さんにも知らせないと!!

樹さんに早く知らせたかったけれど、樹さんは会議に出ていて不在だった。
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