ズルくてもいいから抱きしめて。
ここ最近の私は、ずっとモヤモヤしていた。

あっ、また今日もあの2人一緒なんだ、、、

私の目線の先には、樹さんと橋田さんが並んで歩いている姿があった。

連日続く会議には、各部署の部長と室長たちが参加しているので、樹さんと橋田さんが一緒にいるのは別におかしくはない。

ただ、何となく橋田さんの樹さんへの態度が気になってしまう。

そんな風に感じる私は心が狭いのだろうか?

私がモヤモヤしながら2人を眺めていると、同じ部署の同僚たちが何やら盛り上がっている声が聞こえた。

「あの2人が並んで歩くとやっぱり絵になるよね〜。」

「天城さんは背の高い爽やかイケメンだし、橋田さんはモデル級の美人だし、2人が並ぶと華やかでお似合いだよね!」

「2人は同期なんでしょ?最近よく一緒にいるし、もしかして既にイイ感じなんじゃない!?」

、、、

、、、

、、、

「あっ、神崎!ちょっと良いか?」

ボーッと2人を眺めていると、樹さんがこちらに向かって手を上げて私を呼んだ。

「えっ、あっ、はい!!」

私は慌てて2人に駆け寄った。

「えっと、何でしょうか?」

「“shin”の写真集の件だけど、担当の編集は橋田がすることになったから。」

「えっ?室長自ら担当されるんですか?でも、お忙しいんじゃ、、、?」

室長は全体のまとめ役なので、自ら担当を持つことは少ない。

ましてや、この時期は連日会議続きで、特に忙しいはずなのに、、、

私の考えていることが分かったのか、樹さんは説明してくれた。

「かなりレアケースではあるけど、出版業界初の“shin”の写真集ということで、上層部もかなり気合が入ってるんだよ。その分責任も大きいから、室長である橋田が適任だと思う。俺もお前のサポートに回るから。」

「“shin”を口説き落とすなんて、本当に凄いわ!私も負けないように責任を持って担当させてもらいます。神崎さん、宜しくね!」

そう言って、橋田さんは私に握手を求めてきたので、私はそれに応じた。

「はい、こちらこそ宜しくお願いします!」
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