ズルくてもいいから抱きしめて。
ん〜〜〜
休み明けの月曜日だというのに、今日は少し憂鬱な気分で通勤電車に揺られていた。

金曜日の出来事を振り返り、今日はどんな顔で天城さんに会えば良いのだろう?
上司と部下の関係で抱きしめられることなんて、普通は有り得ない。
私、天城さんに口説かれたんだよね?
それとも慰めてくれただけ?

あの後、天城さんはそれ以上何も言わなかった。

「好きだ』と言われたわけではないし、『付き合いたい』と言われたわけでもない。
でも、『俺はお前の前から消えたりしない』って、、、

天城さんは、どういうつもりであんな風に言ったのだろう?

私は、いったい天城さんとどうなりたいのだろう?

うだうだ考えているうちに、とうとう会社に着いてしまった。
もう腹を括るしかない。
心の中で気合を入れ、私はエントランスを通り抜けた。
勢い良くエレベーターに乗り込んだ瞬間、先ほどの気合いは何処かへ消えてしまった。

「あっ、、、天城さん、、、おはようございます。」

どうしよう、、、いくらなんでも顔を合わせるのが早過ぎる。

「おはよう。お前朝から辛気臭い顔すんなよ!」

天城さんは、そう言って私をからかった。

あれ?天城さんいつも通り?
私にあんなこと言っておいて、普通過ぎない?
えっ、なんで?
じゃあ、あの夜ののあれは何だったの?

その後の就業中も至って普通。
特に変わった様子もなく、天城さんは至って普通だった。

そして次の日も、また次の日も、そのまた次の日も、、、
あの日以来、天城さんからは特に何も言われなかった。

何かモヤモヤする、、、
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