ズルくてもいいから抱きしめて。
どうすれば、自信を持って樹さんの隣に居られるのだろうか?

そう思うと居ても立ってもいられず、とにかく仕事に集中した。

今は目の前の仕事を全力でやるしかない。

「あのさぁ、姫乃。俺がこんなこと聞いて良いのか分からないけど、天城さんと何かあった?」

「えっ?何かって?」

今日、橋田さんは会議があるので、私と慎二だけで打ち合わせをしていた。

「いや、何か無理してるような気がしたから。俺で良ければ話聞くよ?」

「無理?そっか無理か、、、無理してるのかな?自分でもよく分かんないや。」

慎二にも気付かれてしまう程、私は悩みを隠し切れていないのか、、、

樹さんにも心配掛けてしまって、私はどれだけ周囲に心配を掛けるんだろう。

そんなんだから、橋田さんに向き合う自信がないんだ。

私って、まるで子供みたい、、、

そんな風に考えていると、私の目から涙がこぼれ落ちた。

「あっ、どうしよう!ごめんなさい、、、すぐ止めるから!」

慎二は車椅子を私のそばまで移動し、そっと私の手を取り優しく包み込んだ。

「昔の俺なら、こういう時は抱きしめたんだろうけど、今はこれが精一杯。でも、それで良かったと思ってる。男としてじゃなく、姫乃のことをよく知る友人として力になりたい。」

「慎二、、、ありがとう。私は慎二に甘えてばかりで、6年前から何も変わってない。ドロドロの気持ちのままなの。橋田さんはあんなに素敵な人なのに、自分に自信がなくて嫌なことばかり考えてしまう。自分を好きだと言ってくれてる人の気持ちも信じられないの。」

気付いた時には、私は胸の内を全て曝け出していた。
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