ズルくてもいいから抱きしめて。

「天城君！お疲れ様！」

会議の後で俺に話しかけてきたのは、同期で第一編集室の室長をしている橋田夏菜子だった。

「おう、お疲れさん。」

「毎日会議ばかりだと肩凝るよね。早く終わって欲しいな〜」

「上層部のおっさん連中、話が長過ぎなんだよ。眠たくてしゃーないわ。」

「ほんとよね。溜まってる仕事もあるのに、、、あっ！そういえば、さっき報告してたあの“shin”の写真集って本当？」

「あぁ、、、神崎が企画して、先日OK貰ったんだよ。」

「そっか〜神崎さんすごいのね！うちの担当編集は誰が良いかな？希望とかある？」

「そうだな〜業界でもかなり注目されることになるから、出来ればそれなりに経験のあるやつに頼みたいんだよな。」

「じゃあさ、私が担当しちゃダメかな？一度神崎さんと仕事してみたかったし！」

「あぁ、橋田なら安心して任せられるな。神崎にも良い経験になるだろうし。宜しく頼むわ！」

以前から、橋田が俺に好意を抱いているのは何となく気付いていた。

ただ、俺は姫乃以外の女には興味が無い。

橋田も特にアクションを起こしてこないので、あまり気にすることなく担当編集を橋田に頼んだ。

そのことが姫乃を悩ませ、ましてや元カレの前で泣かせてしまうなんて考えもしなかった。