ズルくてもいいから抱きしめて。
橋田の告白を断ってからも、姫乃への接し方が特に変わることはなかった。

ただ、姫乃が時折見せる暗い表情は治ることがなかった。

もしかしたら橋田から何か聞いたのかもしれない。

この忙しさが落ち着いたら、一度きちんと話しておいた方が良いのかもしれない。

そんな風に考えてから数日が経ち、笹山さんとの打ち合わせから帰ってきた姫乃は、明らかに泣いた後のようだった。

笹山さんの前で泣いたのだろうか、、、

俺は、笹山さんへの嫉妬心よりも自分に腹が立った。

姫乃が何かを悩んでいたのは以前から感じていた。

それなのに、俺は忙しさにかまけて姫乃の話を聞いてやらなかった。

無理にでも聞くべきだったんた。

今日は、早めに仕事を切り上げて話をしよう。

そう決心した俺は、大急ぎで残りの仕事を片付けた。
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