夫婦未満ですが、子作りすることになりました
新しい息吹の予感
はからずもお互いの実家を行き来することになった私たちは、やっと零士さんのマンションへ戻ってきた。やたらと泣いていた私は疲れてしまい、彼のベッドに横になった。
彼はそばに腰かけ、ずっと前髪をなでてくれる。
「落ち着いた?」
優しい声にコクンとうなずく。
「はい。心配かけてすみませんでした」
「大丈夫。……いや、大丈夫じゃないかな。凛子に別れ話されたとき、頭が真っ白になった」
そうだ。その件はとても悪いことをしてしまった。零士さんはなんの落ち度もなかったのに、私がひとりでから回っていたのだから。好きでいてくれて婚約までしたのに、いきなり別れを切り出されて青天の霹靂だっただろう。
「ごめんなさい……」
「いいよ。勘違いされたまま結婚したらたまったもんじゃない。俺の愛を全部嘘だと思われるのはもっとキツいかな」
私も、零士さんの言葉を疑いながら生活するのは無理だったと思う。愛される喜びを知ってしまった今では、よけいに。