夫婦未満ですが、子作りすることになりました
私は彼の手を警戒しながら握り返した。
「冗談だったら泣きますよ。それで神代製薬のコールセンターに電話して、神代専務はとんでもない詐欺師だってクレーム入れます」
「ああ、いいよ。冗談だったらだろ? 俺は本気で凛子を狙ってるから」
彼に強引に迫られ続け、私はついに目から涙がポロポロとこぼれてきた。マスターはギョッとして新しいおしぼりを出したが、神代さんは本気の表情を崩さない。
「凛子」
甘く名前を呼ばれ、私は涙とともに鼻をスンスン鳴らしながら彼を見つめた。初めて求愛された感動がじんわり胸に広がっていく。
「本当に私でいいんですか……? 誰にも受け入れてもらえなかった売れ残りですよ。こんなの好きだなんておかしいって私のせいで役員下ろされるかもしれませんよ」
「そんなわけないだろ。それに、売れ残ってたんじゃない。凛子に相応しい男が現れなかっただけだ」
「ううう……」