夫婦未満ですが、子作りすることになりました
本当の目的は遺伝子？
一週間後。駅ビルのカフェのソファ席で、Ｎ大学からの友人、水沼明日菜は、私のスマホをスクロールし零士さんとのメッセージ画面を読み進める。
丸顔のショートカットに大きなメガネ、その愛らしい表情はみるみる歪んでいき、なにか言いたげに私と見比べた。
「若くてイケメンで御曹司で、神代製薬の専務？ しかもこの住所って港区の高級マンションでしょ？ 当然だけど相当なお金持ち。……で、この人と偶然バーで出会っていきなり求婚されたって？ 凛子が？」
「うん。そうなの」
自分の頬がヘニャンと緩むのがわかった。二日経った今でも信じられない。あれから「おはよう」と「おやすみ」のメッセージがちゃんと来ているし、明日、零士さんのご両親に紹介してもらうことになっている。
まさかこんなにトントン拍子に進むなんて。
「凛子のためにハッキリ言うね。絶対騙されてるよ」
明日菜はスマホを小さな丸テーブルを挟んで私に返し、ため息をついた。私は受け取った姿勢で固まる。
