夫婦未満ですが、子作りすることになりました
『凛子。あなたはおそろしく恋愛が下手なんだから、博士号なんて取ってないでさっさと結婚相手を見つけなさい。就職もしなくていいから。そんなのいつでもできるでしょう』
母には進学でも就職でもなく、結婚を勧められた。うちは昔から少しずれている。
子供のころは同級生が幼く思えたのに、それが高校に上がってから逆転し、周囲がとても大人に見えた。勉強しかしてこなかった私は今さら恋愛に興味があるとは言えず、自分の殻に閉じこもった。
大学では瓶底メガネにモジャモジャ頭の男性ばかりで平和だったけど、おかげで恋もせず、経験値ゼロのまま大人になってしまったのだ。
「誰ともカップリングしなかったんです。とくに素敵だと思う人もいませんでしたが、これからがんばって好きになろうと五人の名前を書きました。でも、誰も私を選んでくれてなくて」
「そうですか」
よくわからないカクテルをぐぐぐと流し込みながら、静かに相づちを打ってくれるバーテンダーさんに愚痴をこぼし続ける。独り言かというほど早口だと自覚はしている。