夫婦未満ですが、子作りすることになりました
「どこが怪しいの?」
「その人、なにか目的があるように思えるけど。いきなり結婚前提なんておかしいじゃない。御曹司ならなおさら」
「ええ? 例えばどんな目的?」
明日菜はううーんと唸りながら考え始める。彼女は高校時代から付き合っている彼氏と同棲していて、恋愛においては私にとって大先輩だ。一応、考えを聞いておきたい。
少し待ってコーヒーを飲み、明日菜が「例えば」と話し始めたのでまた顔を上げた。
「そうね、どこかのご令嬢と政略結婚させられそうになっていたところに、ちょうどよく凛子が現れたから婚約者に仕立て上げているとか」
なにそれ。ピンとこず、首をかしげた。昼ドラ大好きな明日菜らしいストーリー。とりあえず、仮定して考えてみるけど。
「でも……代わりに私を連れてきたところで誰も納得しないよ。ただの一般家庭だし、ご令嬢に勝てるものがなにもないもの」
「あるじゃない。ひとつだけ」
明日菜は私の眉間に人差し指を立てた。