夫婦未満ですが、子作りすることになりました
勝てるものがあると告げられ興奮し、私は前のめりに「それって何?」と食い付く。そんなものがあるなら知りたい。
「遺伝子よ。春川家の優秀な遺伝子」
「遺伝子……?」
ドクン、と鳴った自分の心臓に手をあてた。全身に流れる春川家の血液、凝り固まった理系の脳みそ。脈々と受け継がれてきたこの遺伝子が、唯一、ほかの女性に勝てるもの?
フフフと小さな笑みがこぼれ、ついにはソファに背を預けて口を押さえて笑った。
「アハハハ! なに言ってるの明日菜。やだもう。遺伝子なんてなんの役にも立たないじゃない」
冗談かと思って茶化したのだが、彼女はメガネを光らせたまま真剣だ。
「役に立つよ。優秀な遺伝子を持つ女性となら優秀な跡取りを産める。それは神代家にとったら政略結婚より価値のあることかもしれないじゃない」
結婚をすっ飛ばして跡取りの話をされ、私はポッと頬が熱くなった。