夫婦未満ですが、子作りすることになりました
と、笑い飛ばしていたはずが。
「……来ちゃった」
明日菜と解散した午後六時。
私は知らされていた住所を頼りに、彼がひとり暮らしをしているマンションへと引き寄せられていた。
先ほど明日菜と話して、不安でたまらなくなったのだ。やっぱり第三者から見ても私が零士さんに求婚されるなんておかしいのだ思うと、いてもたってもいられなくて。
マンションは見上げても最上階が見えないほど高層な建物で、ここからは一面だけガラス張りの一階のロビーラウンジが見えている。マンションのはずなのに、まるで一泊数十万円の高級ホテルのようだ。
中に入るつもりはない。ラグジュアリーなこの建物を見てもうお腹いっぱいだ。帰ろう。
「えっ」
そう思ったのに、ロビーラウンジに零士さんの姿を見つけてしまい、声が出て、足が止まった。見間違いじゃないよね。……零士さん、かわいらしい女性とテーブル席で話し込んでいる。