夫婦未満ですが、子作りすることになりました

やだ、誰なんだろう。胸が痛い。やっぱり私になんて本気じゃなかったのかな。

ガラスの中にいる彼の視界に入らないように移動すると、エントランスの自動ドアが開いてしまった。

「おかえりなさいませ」

カウンターのコンシェルジュさんにお辞儀され、不自然にこちらも会釈をする。中に入っちゃった。もだもだしていると、向こうから「お呼びだしですか?」と尋ねてくる。

「あ、い、いいです。ロビーで待ち合わせなので……」

すんなりと通してもらえ、ロビーに近づくとやはり零士さんと知らない女性がいる。気配を消して静かに移動し、彼らから数メートル離れさらに背を向ける位置にあるソファに浅く腰かけた。

これではストーカーだろうか。でも、ここまで来たら帰れない。
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