夫婦未満ですが、子作りすることになりました

「ご家族はみんな優秀な研究者ばかり。お母様に至ってはうちの会社のOBよ。凛子さんもN大学の薬学部で素晴らしい論文を残しているから、製薬会社を受けたら引っ張りだこだったでしょうに」

眉を下げたお母様は私の顔を見て「就職しなかったのはどうして?」と付け加えた。恋愛下手で婚活しなければならなかったとは言いづらく、私は苦笑いで答えを考える。

「えーと、それは……早く結婚して、子どもが欲しくて」

これしかないとばかりに口走り、零士さんは「え?」とこちらを振り返る。なにも打ち合わせなしに理想の回答をした私に驚いただろう。彼は目を丸くしてなにか言おうとしていたが、ご両親の「それはよかった!」という歓喜の声にかき消された。

「今の神代家に必要なのは凛子さんのような優秀なお嫁さんなの! 跡継ぎが楽しみだわ!」

「よかったな零士。凛子さんも早くに子どもが欲しいそうだ。お前のために子作りに励んでくれるのだから、感謝しなければダメだぞ」
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