夫婦未満ですが、子作りすることになりました

案内された部屋は広々とした1LDK。外観を裏切らない、高級ホテルのようなシンプルで上質な内装をしているが、ブラウンの木目の家具が多く、緊張する中でも目に馴染みがよくてホッとした。

「お邪魔します」

「座ってて」

背中をトンと押され、テレビとテーブルを挟んだくの字のソファに腰をおろした。零士さんはコーヒーを淹れてくれているよう。庶民なのに御曹司に至れり尽くせりさせて、なんだか申し訳ない。

両手にマグカップを持った彼が戻り、隣に座った。

「昼間の話だけど、少し驚いた。そんなに子どもが欲しかったのか?」

怪訝な声に変わった彼に、また笑顔でうなずく。本当はこんなに急ぐほど欲しいわけではないが、そうしなければ捨てられる気がするし、求められているものをしっかり提供したい。

「はい。その……御曹司ですから、結婚したら挨拶やら手続きやらで忙しくなりますよね? そうなる前にと思いまして。零士さんとなら、すぐにでも欲しいですし」
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