夫婦未満ですが、子作りすることになりました
するとなぜかまたフラッシュバックのように『子どもを産まなきゃ』という使命感がよぎった。彼の気持ちは私と違い、きっとそれありきだろうから。
「……零士さん。私やっぱりできる、と思います」
「いいよ。また今度にしよう。べつにそういうことがしたくて部屋に呼んだわけじゃないから」
軽く断られ、焦ってグッと体を押しつけてみると、彼は微かに離れた。
「ダメだ。揺らぐから煽らないで。俺だって始まったら途中で止められるほど紳士じゃない。凛子も初めては大事だろう?」
私はさして大事ではない。早く零士さんに奪ってもらって、彼のものにしてほしい。でも、彼に大事にしてもらえていると思うと、うれしくてたまらなくなる。不思議。子作りが目的なのに、どうしてそんな素振りを見せるの?
ああ、好き。理由もなく切なくなる。結婚するというのに、想いが募るほど失恋しているみたいな気分だ。