夫婦未満ですが、子作りすることになりました

「でも……零士さんのお母様も、早く跡継ぎが見たいって言ってましたし」

「だから、あの人と俺の考えは違うんだって。凛子との子どもは欲しいけど、でもそれは絶対どうこうできるって類いの話じゃないだろ。例えば極論、子どもができなくてもそれはそれでいいと思ってるよ」

信号が青になり、彼はまっすぐ前に目を戻した。私は手足が冷たくなり、心臓がドクドクと音を立てている。

子どもができなくてもいい? 零士さんはなにを言っているのだろうか。子どもができないということは、私はお払い箱になるということ。それはそれでいいって……。それはしかたないって思えるの?

「そ、そうですか……。たしかに、そうですね。しかたないのかも」

「な。あんまり考えすぎるなよ」

がんばらなきゃいけない。零士さんは私よりずっとシビアだ。なんとしても妊娠しようとすがっている私と違い、ダメなら捨てればいい、彼はそういう考えなんだもの。

「じゃあ、おやすみ。帰ったら連絡するから」

去っていく彼の車に、玄関から手を振った。うまく笑顔を作れているだろうか。

妊活しているのは、どうやら私だけだったらしい。ふたりでがんばっていると思っていたのに、なんて孤独なんだろう。そしていつまでこんな寂しさが続くのだろうか。
< 71 / 104 >

この作品をシェア

pagetop