夫婦未満ですが、子作りすることになりました
「でも……零士さんのお母様も、早く跡継ぎが見たいって言ってましたし」
「だから、あの人と俺の考えは違うんだって。凛子との子どもは欲しいけど、でもそれは絶対どうこうできるって類いの話じゃないだろ。例えば極論、子どもができなくてもそれはそれでいいと思ってるよ」
信号が青になり、彼はまっすぐ前に目を戻した。私は手足が冷たくなり、心臓がドクドクと音を立てている。
子どもができなくてもいい? 零士さんはなにを言っているのだろうか。子どもができないということは、私はお払い箱になるということ。それはそれでいいって……。それはしかたないって思えるの?
「そ、そうですか……。たしかに、そうですね。しかたないのかも」
「な。あんまり考えすぎるなよ」
がんばらなきゃいけない。零士さんは私よりずっとシビアだ。なんとしても妊娠しようとすがっている私と違い、ダメなら捨てればいい、彼はそういう考えなんだもの。
「じゃあ、おやすみ。帰ったら連絡するから」
去っていく彼の車に、玄関から手を振った。うまく笑顔を作れているだろうか。
妊活しているのは、どうやら私だけだったらしい。ふたりでがんばっていると思っていたのに、なんて孤独なんだろう。そしていつまでこんな寂しさが続くのだろうか。