夫婦未満ですが、子作りすることになりました
ずっと好きだった
本当に、車は彼の実家へ向かっている。気まずくて先ほどからなにも話せていない。彼も同じだ。ただ少し怒っているように感じる。
赤信号で止まったとき、ちょうどよく彼のスマホの着信音が鳴った。画面には【母】と表示されており、彼はスマホを置いたままスピーカーにして出る。
『あ、零士?』
「なに」
『ちょっと困ってるのよ。今、若葉ちゃんがうちに来てるの』
「若葉が?」
どうして、ご実家に? 私が婚約者だって話になっていたのに。不安な視線を彼に向けていた。今さっき婚約を解消したいと申し出たばかりなのに、なにヤキモチを妬いてるの。
『零士と結婚したいって直談判しに来たって帰らなくて。今日お父さんは会社に出てるんだけど、商談中なのか電話が繋がらないのよ。無下にできないから追い返すわけにいかないし、どうしましょう?』
「ちょうどいい。今からそっちに行くから、若葉には居てもらって」
お母様の返事を聞かず、零士さんはすぐに終了をタップする。それと同時に信号は変わり、車が動き出した。