夫婦未満ですが、子作りすることになりました

「すみません零士さん……。私、こんなすごい人だとは知らなくて、ついあんなことを」

「なんで。凛子は正しいだろ。それに、それまでの俺は本当になにもかもが嫌で無気力だったんだ。会社のことも軽く見て、跡継ぎだなんて勝手に決めるなと駄々をこねていた。全然、たいした人間じゃなかった」

目を閉じて自嘲する零士さん。横のお母様もウンウンとうなずいている。

「凛子に言われたことが刺さったよ。一瞬で惚れたね」

熱い視線を向けられながらの〝惚れた〟宣言にズキュンと胸を射ぬかれた。あのときの失礼な私に? でも、あれは紛れもなく私の信条そのものだ。勉強一筋で、いつか必要になるときがくると信じて取り組む。合わないと距離を置かれても曲げることのできなかった私。それを好きになってくれたっていうの?
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