私の堕天使さま!
「へぇ? 立ち聞きねぇ?」
頭上で聞こえた声に慌てて顔を上げると、
すぐ側に辻元君の顔があった。
驚いてゴミ箱を抱えたまま、彼がいる渡廊下から離れる。
そんな私を見て、辻元君は楽しそうに微笑んだ。
「君も俺と遊びたいの?」
「いやいや、私はゴミを捨てに来ただけです」
どうしたら平和にこの場を去れるのか。
そんなことを考えつつゆっくり後退ると足元の砂が小さく音を立てた。
「いるんだよな、たまにそうやって偶然を装う奴」
「装ってるんじゃなくて本当に」
どれだけ自意識過剰なんだ、この男は。
そのまま距離を取ろうと後ろに下がって行く。
隙を見てこのまま逃げてしまおう。
そう思いながら右足を後ろに下げた瞬間、
視界に飛び込んできたのは夕焼け空だった。