アクマの果実
「例えば...そうですね。
河津さん、かけている眼鏡を外してもらえます?」

「え...これ外したら私、ほぼ何にも見えないですよ。」

「僕の場合、安澄さんみたいにすごいことはできませんけど。」

見えないけど、なんか目を後ろから手で...。

そのだーれだのノリで何かするのやめて?



ぱっと秌場くんが手を離すと。



「え...えぇ?

これって今眼鏡かけてましたっけ。」


「かけてないですよ。

秌場くんの地味な特殊能力、視力回復ですね。
あとは、髪の毛の長さを調整したり、身長伸ばしたり、美人にすることもできます。」

「河津さんはもう十分美人さんですけどね。」

「え、そうなんですか?

とにかく、なんかめちゃくちゃ目が良くなりました。

なんならそこの山の上におじいさんが屈伸運動してるくらいが見えるようになりました。」


「よかったです。信じていただけました?」


「まあ、信じますけど、悪魔って願いを叶える代わりに魂持ってくんじゃないんでしたっけ。死神はよく知りませんけど。
そもそも仲良いのかも知りませんし。」

「秌場くんの場合は、何かと遭遇することが多いので、どちらかと言えば仕事とか派閥とかの付き合いじゃなくて、プライベートって感じです。

それに、秌場くんは魂もいけるでしょうけど、あまり食えたものじゃないって言ってます。」

「すみません。僕は苦手なんですよね。

色んな雑味がするじゃないですか。」

「確かにな。あれは大人の味だよ。」


いや知らんがな。


「だから、本来、願いを叶えるくらいの奇跡は起こせるんだけど、あれって契約による対価交換だから。まあ、秌場くんじゃ無理なんだよね。そういうキャリア積んでこなかったし。」

「...安澄さん、今のでまたお腹が空いちゃいました。」

「好き嫌いが激しい君は常に飢え気味だからね。いっそのこと餓死すれば?」

「無理です。まだ当分苦しまないとしねません。」


怖え...。


「でも、お弁当食べてましたよね。」

「あれは、食材の栄養価に関わらずなんですよ。」

「どういうことです?」

「つまり、秌場くんは偏食なんですよね。
かなり失敗したクソまずい料理でも、もはや食品サンプルでも秌場くんは食べます。」

「え...。食べなさすぎて頭おかしくなってるんですか?」

「どうやらそのようです。
最近、猫に対して美味しいって言ってましたから。」


!!?


こいつ猫食ったんか!!



「そんなにいけないことですか?」

「悪魔の基準は知りませんけど、
私たち猫は食べません!!」

「そうなんですか。
あんなに美味しいのに。」

...。


「河津さんも、なんだか...。」

「こいつ私を食おうとしてません!?」

「おそらくそのようですね。」

「嫌です!
私、しにたくないんで!!」

「冗談ですよ...。」

「割と、目がマジなんですよ!!
というか、もう昼休み終わるし、次、移動教室なんで、ここから移動した方がよくないですか。」

「そうします。」
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